『MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ』日高 洋祐他

 

MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ

MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ

 

読了日:2019年3月12日
おすすめ度:★★★☆☆

最近よく聞く略語の1つにMaaS (Mobility as a Service、マース)がある。

"MaaSとは、従来のマイカーや自転車などの交通手段をモノで提供するのではなく、サービスとして提供する概念だ。「あなたのポケットにすべての交通を」というキャッチフレーズが世界中で共感を呼び、スマートフォン1つでルート検索から予約、決済までが行え、自分の好みに合った移動手段や移動パターンが自由に選択できる。まさに「移動の所有から利用へ」の流れを1つのパッケージとして商品化した、究極のモビリティサービスがMaaSである。" (p20)

本書は、MaaSとはそもそもどういうものか、そしてなぜそれほどまでに注目されているのかを、豊富な事例と共に紹介した本である。
日本国内に限らず、海外の動向もとても丁寧に説明されており、MaaSの概要を知ることができる。

私はこれまでなんとなく見聞きしたことがあるだけで、MaaSとは何なのかほとんど知らなかったが、この本を読んでその概要を知ることができ、今後の世の中の動きを見ていく上で重要になるテーマの1つだと感じた。

なぜ今、MaaSがそれほど注目されているのだろうか。

"MaaSが注目されるのは、手付かずのフロンティアであるモビリティサービスの分野においてMaaSオペレーターのポジションを握れば、ユーザーに一番近いところを支配する、モビリティのプラットフォーマーになれると期待されているからだ。
モビリティサービス市場は、GAFAに侵略されていないうえ、コネクテッドカーや自動運転など「100年に一度」の技術革新が実現しようとしている市場だから、ここでプラットフォーマーのポジションを築いておけば、間違いなく将来的な成長を期待できる。" (p114)

Googleは検索サービスの世界を制した。
Amazonは小売りの世界を制した。
FacebookSNSの世界を制した。
Appleスマホのハードウェアの世界を制した。

MaaSの世界は、まだGAFAが十分取り込めていない領域であり、まだまだプラットフォーマーとしての狙うチャンスが残されているというわけである。
自動車メーカーや鉄道会社だけでなく、UberLyftなどの配車サービスや、自治体、通信サービス会社など、全世界でプラットフォーマーの地位を狙った熾烈な競争が繰り広げられている。

日本でも、トヨタソフトバンクが2018年10月に共同出資でMONET Technologiesを立ち上げ、MaaSビジネスに本格参入している。
残念ながらフィンランドなどのMaaS先進国と比べると日本は遅れているようであるが、今後どのようにMaaSが私たちの移動の在り方を変えていくか、だれがプラットフォーマーとしての地位を確立するのか、引き続き注目していきたい。