『子どもが幸せになることば』田中 茂樹

子どもが幸せになることば

子どもが幸せになることば

 

この本、「はじめに」がとてもいい。「はじめに」だけでも一読の価値ありだろう。特に幼い子供がいる親にとっては。

冒頭で著者は、
出木杉くん(ドラえもん
・カザマくん(クレヨンしんちゃん
・カツオ(サザエさん
・まる子(ちびまる子ちゃん
のうち、だれが好きかと問う。
多くの人は、カツオやまる子を選ぶのではないだろうか。しかし、いざ自分の子供のこととなると、出木杉くんやカザマくんを目指してあれやこれや習わせたり、ドリルをやらせてみたりしてしまう親が多いんじゃないかと思う。自分も娘が2人いるが、どうしても子どものためにと、いろいろしてあげたくなってしまう。

著者は言う。

"子どもはもともと元気な存在です。元気であれば、「幸せになるためにどうしたらいいか」を、自分で探して動き始めます。" (p3) 

親は自分なりによく考えて、育児本やネットの情報を参考に子どもにとってベストなことをしてあげたくなってしまうものだが、そんなにあれこれしてあげる必要はないのである。唯一してあげるべきなのは、「子どもを元気でいさせてあげること」だろう。そうすれば子どもは自分で考えてやっていくのだ。

考えてみれば自分も子どもの頃は「別に親にやってもらわなくても自分でやるし」と思っていたのではないだろうか。もちろん両親がいろいろとやってくれたことはとても感謝しているが、子どものときに持っていた子どもの心を忘れないようにしたいと改めて思った。

そしてもう1つなるほどと思ったことがある。

"育児はそれ自体が目的であり、手段ではないということ。子どもと過ごすこと自体が、とても贅沢で幸せなことであるということです。" (p4) 

 自分もそうなのだが、「将来〇〇な大人になれるように△△する」「小学校で有利になれるように〇〇する」「学力を上げるために〇〇する」というように、何かの目的を達成するために育児をするという考え方に多くの親がなっているのではないだろうか。そうではないのである。育児それ自体が目的なのである。親は育児そのものを思う存分楽しめばいいのだ。オムツを変える。離乳食をあげる。絵本を読んであげる。幼稚園に送っていく。などなど、あげればきりがないが、すべて育児だろう。そういう行為そのものがとても贅沢で幸せなことなのだ。

著者は「はじめに」の最後で言う。

"子どもの生活のすべてを親が知っている。
子どもがいつも「お父さん」「お母さん」と呼びかけてくれる。
そういう日を懐かしむ日が、すぐにやってきます。
いま、幼い子どもといられる短い期間を、ぜひ大切にすごしてください。" (p11)

 今のこの瞬間を、思う存分楽しもうと改めて思った。