『宇宙の覇者 ベゾスvsマスク』クリスチャン・ダベンボート

 

宇宙の覇者 ベゾスvsマスク

宇宙の覇者 ベゾスvsマスク

 

読了日:2019/5/9

おすすめ度:★★★☆☆

 

1969年にニール・アームストロングらが月を歩いてから50年が経とうとしている。
この50年は残念ながら宇宙飛行の長い停滞、あるいは後退の時代と言われている。
しかし、そこに風穴を開けようとしているのが、スペースXのイーロン・マスクであり、ブルーオリジンジェフ・ベゾスである。
本書は、マスクやベゾスといった、「宇宙の覇者」として名乗りを上げている者たちの歩みと展望を記した本である。 

宇宙と聞くとNASAがいちばんに頭に浮かんでくるのは私だけではないだろう。
ところが、実はNASAの活動は長い停滞期にあるようだ。

 "アポロ計画後、歴代の大統領は宇宙への偉大な冒険を何度となく約束した。
(中略) しかし、何年経っても、何十年経っても、NASAは地表からわずか400キロの地球低軌道上にある国際宇宙テーションにしか人を送っていなかった。
まるでコロンブスが新世界を発見後、誰もそのあとに続こうとしなかったようなものだ。" (p224)

NASAが停滞期にあるとは言っても、一民間企業がこれまで国家が担ってきたような事業を行うのは並大抵のことではない。
幾多の困難を乗り越える必要があったし、莫大な資金が必要であった。

 著者はマスクを「兎」、ベゾスを「亀」にたとえる。 

"ふたりがスタートラインに並び、号砲が鳴らされたとき、先に飛び出したのは兎だった。
突き進め。限界を打ち破れ。
(中略)いっぽう亀の歩みは遅かった。
それでも一歩一歩、着実に前進を続けた。
ゆっくりはスムーズ。スムーズは速いと静かに唱えながら。" (p379)

本書ではマスクとベゾス、この対照的な2人の宇宙ビジネスにおける覇権争いが
ドラマチックに描かれている。
競争こそが彼らの意欲に火をつけ、宇宙ビジネスの発展の原動力となっているのである。

しかし、この競争はまだ始まったばかりである。
これから何年続くか、何十年続くか分からない、長い長い競争である。
その競争をリアルタイムで見届けるためのバックグラウンドを理解することができとても勉強になった。
この二人の動向には今後も注目していきたい。

最後にもう1つ興味深いなと思ったエピソードを紹介する。

"高校時代のベゾスのガールフレンドがあるインタビューで、ベゾスは宇宙企業の設立資金を稼ぐためにアマゾンを創業したのだと話していた。
2017年5月の水曜日に行われた今回のインタビューで、ベゾスはそれを
「ある程度はほんとうだ」と認めた。" (p350)

高校時代から宇宙事業への挑戦を見据え、莫大な資金を用意するためにアマゾンを創業したということか。

アマゾンを通過店にして、さらにその先の目標に置くくらい、宇宙というのは魅力的なものということなんだろう。

この先のマスクとベゾスを中心として展開していくであろう宇宙開発の動向に、これからも注目していきたい。